【代理ミュンヒハウゼン症候群】
昨日、大阪高槻市で、一歳8ヶ月の女の子がインシュリンを投与され病院に運ばれ、更に、また病院でインシュリンを投与され治療を受けるというニュースが報道されました。
一部の報道によると、それは母親からの投与であると報道され『代理ミュンヒハウゼン症候群』が紹介されていました。
ミュンヒハウゼン症候群(Münchausen syndrome)とは、DSM-5(精神疾患の分類と診断の手引き)では、『身体症状症および関連症群』に分類され、『作為症/虚偽性障害』と診断される精神疾患の一種です。
『ミュンヒハウゼン』は、『ほら吹き男爵』の異名を持ったドイツ人貴族のミュンヒハウゼン男爵にちなんで命名されたと言われています。
症例としては、周囲の関心や同情を引くために自らが病気を装ったり、自らの体を傷付けたりするといった行動が見られます。
この疾患には、虚偽の病気や障害を起こす対象が患者本人である『ミュンヒハウゼン症候群』と、近親者(子供や配偶者、ペット)を病気に仕立て上げる『代理ミュンヒハウゼン症候群』の2種類があります。
日本においては、厚生労働省が一般小児科医にむけた研修のテキストの中でも、子どもの症状に、親の『代理ミュンヒハウゼン症候群』が関連している可能性を指摘し、注意を呼びかけています。
この『相手の同情や気を引くため』に、手術や入院を要する病気やケガをつくり出し、繰り返す行為は、その目的が果たされるためなら『積極的に』なされることが報告されています。
背景には、幼少期の病気やケガをしたときの経験があると言われていますが、そのまた背景には『自尊心』の課題があるとも考えられます。
すなわち、『自分は、そのままで相手の関心を得る存在だ』『自らの存在(身体)は大事だ』という自尊心があれば、わざわざ、病気やケガを『自ら』や『自らの近親者』につくり出す必要はないのでは、という考え方です。
『自尊心』の問題は、ミュンヒハウゼン症候群やパーソナリティ障害の様な精神疾患と診断されるものだけではなく、『共依存症』という人間関係や『アダルトチャイルド』という個人の傾向にも関わっています。
さらに言えば、疾患や傾向に関わらず、『自尊心』は私たち人間の生活の中でも切り離せないものです。
『わたしは価値がある人間なのか』
『わたしは他からどう見られているのだろうか』
『わたしは愛するに値する人間なのか』
そのこたえを探して『生きる』生き方もあるでしょう。
けれども、それが行き過ぎると、『わたし』という存在の証明のために、自分を傷つけ、相手を傷つけ、大切なものを失い、そして、それを繰り返してしまう・・生き方が危懼されます。
もちろん、病気と診断されるほどの行動の背景には、まだまだ、その要因が解明されていない可能性もあり、個人の問題ではなく、何らかの身体的要因がある可能性も否めません。従って、まずは医療のケアが重要になり、その進歩が期待されます。
当カウンセリングルームでは、精神疾患と診断される状態の援助には限界がありますが、予防的に、日々の生活の中でのさまざまな『生きづらさ』をサポート出来たらと活動や研鑽を重ねています。
今週末にも、まさに『自尊心の問題』が背景にある『共依存』のワークショップを開催します。講師は、その道の第一人者の水澤都加佐先生をお招きしています。
『自尊心』
・・・それほど、自分にとらわれず、自然に生きてゆけたら私たちはもっと楽に生きてゆけるのでしょうか・・・。ブッタが目覚めた様に、私たちも、日々の生活の中で、『目覚める』ことができるのでしょうか・・・。
週末のワークショップ(土・日)は、共依存、依存、人間関係の境界線、そして、その回復に向けて出来ることをテキストを交えながらエクササイズしてゆきます。後、数名ずつご参加頂けます。ぜひ、この機会を、必要だと感じる方にご活用頂ければ幸いです。また、ご紹介頂ける方が要らしたら、ご紹介頂けると有り難いです。よろしくお願い致します。
最後まで目を通して頂き、有り難うございました。
《参考文献》
・DSM-5精神疾患の分類と診断の手引き 医学書院
・厚生労働省PDF;一般小児科医のための子どもの心の診療テキスト
http://www.mhlw.go.jp/bunya/kodomo/pdf/kokoro-shinryoui01.pdf
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講師:アスク・ヒューマン・ケアセンター講師
Healing & Recovery Institute 所長 水澤都加佐先生
2017年3月11日12日(土日)
定員30名(先着順)
開催地:神戸
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